92.どういう風にしたら人は動くか

(質問者)うちの子供たちが、僕が仕事終わって帰ると、こたつでボーッと寝てるんですよ。布団も引かずにこたつで寝て。親としては、「自分で引いて寝ろ」とつい言っちゃうんですよ。「早く引いて寝ろ」って。というのが、言ってしまった後に、「これ、どうやったんかな」といつも思うんですよ。

 

(学長)子供に自分で引いて寝ろと。

 

(質問者)引いて寝ろと。そういうしつけみたいなもんで、自分の価値観で「寝ろ。自分でそういうものはやるもんや」と言うんですけど。かぶせじゃないけど、そういう言が、どういうふうに捉えたらいいのかなと。

 

(学長)いいんじゃないかなと思うんだけど。ただ、人間の基本的なことを知っといたほうがいいと思うんです。どういうふうにしたら人は動くか。また、喜んで動くかってことを。それを一言で言ってた人がいるんです。それは山本五十六って、戦争の時の有名な人です。「やってみせ、言って聞かせてやらせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」って言葉がある。これはかなり短いフレーズだけど、人を使う真髄が入ってると思う。

ま、例えば布団は、一回「このように引くんだ」とやってみせ、「こういうふうに引くと、みんながこうやってあれするんだよ」とか「いい夢見れるんだよ」とか何とかかんとかって、いろいろ言うわけ。「寝てても気持ちいいでしょう?」とか「朝起きてトイレ行く時はこうだよ」とかさ、何か言って聞かせる。まず引いてみせる。言って聞かせる。「じゃあ、やってごらん」ってやらせる。「ああ、そうそうそう。いいねえ」とかって。「ああ、素晴らしい!」って褒めて。「ああ、できるじゃない」とかって、褒めてやらねば人は動かない。

そうすると、嬉しくなるから、明日も明後日もやりたくなる。逆に、布団引くのが楽しみになってくるかもしれない。この四つのフレーズ。やってみせ、言って聞かせ、やらせてみて、褒めてやらねば人は動かじ。あの戦争の命令で動くはずの時でさえ、そこまで気を遣ったってことですよ。普通なら命令で、みんな絶対服従のはずなのに、その時にもそこまで気を遣ったっていうことです。

(受講生)今、「絶対服従」という言葉に来てしまったんですけども。

(学長)来てって。

(受講生)刺さったというか、残ったというか。やっぱり自分たちが小さい頃もそうだし、子供は親の言うことを聞くべきとか、時間の忙しさもあるし、とにかく「やらせなきゃ、やらせなきゃ」が先に立ってしまって、ゆとりがないというか、ねえ。

 

(つづく)